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社長コラム:PRESIDENT’S COLUMN

vol.011宝物はグランドに... アメリカンフットボールの話 その6(最終回)

それは「人生の為のフットボール」


主将として、日大に公式戦で勝つことだけを目標に闘った4年生のシーズン。春の定期戦で日大の60連勝という大記録を阻むことができ、マスコミなどにも結構騒がれた。でも、所詮は春の練習試合での話、僕の本音はホンチャンでの勝利が不可欠だった。で、「日大」、「日大」と思っていたら、専修大学にリーグ戦で敗退してしまった。5勝1敗同士で同率リーグ優勝であったが、直接対決で勝っていた専修大学がリーグを代表して王者日大への挑戦権を獲得した。それはそれは、とっても惨めだった。「勝っても負けてもいい」...とにかく日大戦で、全力を尽くしたかった。その為の一年を必死に積み上げてきた。でも、結局は闘うことさえ出来なかった。

その悔しさは今、具体的な効果として後輩達に受け継がれて、今や法政大学は関東における王者の地位を不動のモノにしている... と、いっても、はっきりいってそんなこと僕にはゼンゼン関係ない。王者の地位も、日本一も僕には興味なかった。僕の本音は、、、日大と戦いたかった... 「男」を賭けた勝負がしたかった... とにかく、燃えに燃えた4年間、最後に燃え尽きる場所が欲しかった。

この事実が僕の人生に与えた影響は少ないものではない。その後に歩んでいる10年足らずの人生において、大なり小なり様々な要素において、その果たせなかった強い思いが、まるで怨念を背負った霊魂のように僕の周囲には漂っている感すらある。具体的な努力は一定の効果を生むことは確認できた。単に受け継いだモノを単純に引き継ぐことは努力とはいえない、ということも知ることができた。先輩達も頑張ってはいたが、同じことは他人も当然、している訳である。徹底的に、もっと具体的に、もっと論理的に、もっと戦略的にアプローチしなくては駄目だ。ただ、そんな「適切な努力による一定の効果」などはなんら意味をなさないことも同時に知ることになった。

では、「最後の結果を掴み取る」には何が必要なんだろう? それは今、探索中である... もしかしたら「最後の結果」など、どこにも存在しない「Never Land」のような場所なのかも知れない。しかしながら、あんな悔しい思いは「二度とゴメン」なことは本能に深く刻み込まれていて、「最後の結果を掴み取る」べく、今日も明日もあさっても、日夜研鑚をつんでいる訳だ。

卒業後は大学の「コーチ」となった。その後、Xリーグという社会人リーグでプロのコーチとなった。ただ、大学卒業後のフットボールの係りはあくまでも副次的なもので、フットボールを主体に何かを決断したりしたことはまったく無い。(現実...脱サラ後、プロコーチは生活費を稼ぐに大変たすかりました...)選手にも「まるで」未練がなかった。と、いうのも、いつでもフットボールに対する僕の考えは「人生の為のフットボール」であり、「フットボールの為の人生」ではないからだ。ごくごく当り前のことのなのであるが、フットボールは大変魅力的なスポーツであり、またその魅力的なスポーツにおいて、ある程度の実績やコーチのとしての地位を築くことにより「居心地」が良くなってしまうのだ。

「居心地」の良い場所は危険である。成長を明らかに妨げる。高校入学して、初めてフットボールと出会った時も、また大学でフットボールを始める時も、敢えて「挑戦」する道、つまり「居心地の悪い場所」を自ら選択してきた。そしてその裏には「自分への挑戦」というものが常にあった訳だで、居心地の良い場所を求めたことは一度も無い。新しい自分、未知への挑戦。その「権化」が僕にとってのフットボールな訳だ。

だから、「フットボールで勝つ」ことや「レギュラーになること」、「主将に選ばれること」、「オールジャパンになること」等々は、凄く大切な「人生の物差し」なのである。(人生というと背筋が痒くなるようだが、一生懸命モノゴトに取り組むと不思議と自然にこの言葉と出くわしてしまう...) 「これだけ頑張れば、この程度にはなれる」、という大切な大切な「物差し」だ。反対に、「物差し」は道具としては便利であるが、使わなければ邪魔なだけ、飾りにもなんにもなりはしないし、それ自体では価値は生まない。だから、「人生の物差し」、そして「人生の為のフットボール」な訳である。僕のアイデンティティーとして「フットボールの為の人生」を選んではこなかった。 そして、だからこそ「誰よりも本気でフットボールに打ち込めた」のだ、と自信を持っていえる。そして、だからこそ今、「フットボールに全ての情熱を賭けて良かった」と自信を持っていえる...

居心地のいい、フットボールに身を寄せていては、フットボールに申し訳ない。僕を育ててくれたのはフットボールだ。僕に自信を与えてくれたのも、「やる」ことの具体的なアプローチを教えてくれたのも、我慢の大切さを教えてくれたのも... そして最後の最後に「頭をガツーンと思い切り殴ってくれた」のも全部、フットボールなのだ。せっかくもらった「フットボールからの贈り物」、その痛さを忘れたことなど一度も無い...

今でも夢を見る...
練習の時間が来る...スパイクがない...皆がキャプテンである僕を待っているのに、グランドに行けない...。
明日は「甲子園ボウル」だ... やっと俺は憧れに憧れた甲子園ボウルに出れる... でも、どうやって闘うのだろう、昨日までまるで練習なんてしてないのに...。
まるで奇妙な夢に毎年毎年、何度かうなされる。今現在、僕が法政大学の現役フットボール選手の夢、でも身体は32歳で75kgの僕なのだ。とにかく練習や試合が迫ってくる、でも何かしらの理由で、その練習にも試合にも出場することができない、そんなジレンマにうなされる非常に不快な夢だ... そんな時、決まって目を覚ましては自戒する「もう二度とあんな思いはゴメンだ」と...

コーチとして、NFLEリーグにインターンコーチとして参加するチャンスに恵まれた。フットボールのコーチとして将来を形成しようとは思ってなかったが、もっと違う形で大胆に日本のスポーツ界に貢献したいと思っていた。その思いがこのNFLEによって確実に近づいたのだ。

話は少し変わるが... 日本で一番のスポーツは... 漠然とはしているが僕は「野球」だと思う。ではスポーツ界の頂点は、といえば間違いなく、プロ野球を僕は選ぶ。そして、僕の大学、法政はとにかくプロ野球選手が多い。2つ上には現在阪神タイガースの葛西さん、一つ上には広島カープの瀬戸さん、同期には現在、近鉄バファローズの高村、千葉ロッテの諸積など、枚挙に暇がない。

そんな頂点を極めている人たちを身近で見てきて... 「もっとこうすればいいのに」と思うことが山ほどあった。例えば練習内容。今でこそ野球でもアジリティー等のスピードトレーニングが取り込まれているが、僕らが現役の時は長距離や単純なダッシュばかりだった。また、リハビリやメディカル面でもアイシングの概念がなかったり、テーピングもしなかったり、等々、と単純なるスポーツとしてのインフラにおいて、フットボールが優れていることが多すぎるのだ。

その「優れている」ことを象徴しているのが本場米国のNFLだ。スポーツに係るあらゆる革新的なアイデアのリード役をフットボールが担っている。リハビリテーションやウエイトトレーニング、戦略、戦術的なアプローチ、新しい製品、エンターテイメントしての奇抜な試み等々。その頂点の何たるかをNFLEで垣間見ることができ、ますますフットボールの価値を知ることができた。本分であった「フットボールコーチとして」という意味でも、もちろん大分役にたったが、むしろ「スポーツ自体のプロモーション」で役に立っていると思っている。現在、日本総代理店となっている「アンダーアーマー」や「EAS」との出会いもこのNFLEにおいてである。フットボールはさておいて、魅力的な商品がNFLには山ほどあり、またそれは一様に革新的なのである。つまり、アンダーアーマーも、EASサプリメントにおいても、先ずはアメリカンフットボールで試行され、野球やバスケットボールに広がっている。日本においては野球がその牽引役を担わねばならないだろう。でも、日本の野球界はお世辞にも革新的にとはいえない。だから、フットボール出身の僕らが牽引していきたいという強い衝動にかられる...。

横道に少しそれたが、とにかく「人生の為のフットボール」を歩むことによって、得られたものは計り知れない。と、いうよりも、何年生きられるか分からないが、これからがその「人生の為のフットボール」を実践していくということなのだろう。

いろいろ、ごちゃごちゃ書いたが、とにかくフットボールまみれの人生って訳だ! フットボールが楽しくてたまらないから、フットボールを活用したい。僕自身の人生においても、そしてまた他のスポーツを愛する人たちのためにも。そして...本音を言えば最後には、「夢にうなされるフットボール」とはおさらばしたい。それが僕が追い求めている「最後の結果を掴み取る」という漠然とした目的地なのかも知れない...。

フットボールを通じて、「やる」ことの大切さを知った。「やる」人生を強く生き抜いて行きたいと思っている。そして、一人でも多くの人々が、スポーツを通じて豊かなで深みのある人生を歩んでもらいたい、そんなふうに思っている。そのための環境整備を民間企業という立場から、プロモーションしていきたい、と思っている。 「フットボール」により、支えられている僕の人生。それはこれからが僕にとっての本当の「試合」なのかも知れない...。

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